第5回 ももたろう未来塾 〜フィールドワークのススメ~

岡山吉備中央町ぶどうピオーネ

伊原木塾長です。
いつも岡山県のことを最優先に考え、防災面でもいつ何があるかわからないと危機感を持たれています。
全てに一生懸命ですごくまじめな方です。
まじめにお世辞ではない・・・

講義:フィールドワークのススメ -まちへ飛び出そう!-
講師:二階堂 裕子氏

■社会を調査する
□社会調査を取り巻く現状
現代は知識や情報の価値が高まり、情報の生産、発信、収集、処理が重要性を持つ「情報化社会」
問題点:不適切な方法で社会調査が行われてる=信頼性が危ぶまれる

必要な能力
①正確な情報を収集
②正しく処理
③他者の情報の信憑性を判断する

□社会調査の目的
ある社会や集団の特性を明らかにした上で、「なぜその社会現象が生じたのか」について考える
※現象の背景を明らかにすることが研究

①問題意識に基づいて
②ある社会現象に関する情報(データ)を収集し、 ※アンケートなど
③そのデータを記述・分析した後
④結果を公表する ※結果を還元する
この一連の過程が社会調査

□仮説の検証と見直し
「仮説」とは、ある現象を説明するために定式化された命題のこと

仮説を収集した情報やデータに照らし合わせた結果
その仮説では説明しきれない現象や事項が見つかれば
仮説の練り直しが必要

仮説→検証→仮説→検証の繰り返し

例)自殺が起こる背景で「社会のまとまりがなくなるほど高まる」より検証
①男>女
女性の方が人との関わりが多いため女性の方が少ない
②カトリック<プロテスタント
皆で祈る機会が多い方が少ない検証
③都市<中山間
中山間は元々人が少ない

■社会調査の種類と方法
□量的な調査
①調査票(アンケート用紙)を用いて行われる調査法 ※答えも数値で出てくる
②多数の人々を対象とし、得られた大量の数量的データを統計的に分析する
③多くの場合、ある仮説を検証しようとする際に用いられる

□質的な調査
①インタビュー、参余観察、日記や新聞記事の分析など、多岐にわたる方法で行われる調査法
②少数の事例や人を対象に、ある社会現象の、数量では把握できない質的データを収集・分析する
③多くの場合、新たに仮説を導きだそうとする際に用いられる

□量的調査と質的調査の相互補完関係
①ある社会現象について、すでに研究が行われており、仮説が存在する場合は、
その仮説が妥当かどうかを検証するための量的調査が適している
②ある社会現象について、まだ十分な研究が行われておらず、データも不足している場合は、
仮説を新たに考え出すための質的調査が適している

質的調査による仮説の導出

量的調査による仮説の検証

繰り返す
※研究状況を見極めたうえで、適切な調査法を選ぶことが重要

例)「カフェ難民になる理由」より
①理由が思い付かない

②仮説がない

③アンケートもできない

④質問が多くなる

⑤回収率が下がる

仮説もないのにアンケートをしない
実際にアンケートなど質的調査を行う
情報収集の順番が大事である

■「おやじ」研究を事例にフィールドワークの実践
①問題意識の明確化
例)「父親にも読まれることを想定した雑誌が人気を集めるのはなぜか?」
※父親の子育てをめぐる状況に焦点を当てる

②事前勉強
・内閣府の世論調査
・労働政策研究・研修機構の調査結果
・家族・子育て関連の書籍を調べる
様々なことろから情報を集める

すると、子育て期にある男性の多くは、子育てに関する理想と現実の間で葛藤していることがわかる
新たな試みとして、父親たちが作る「おやじの会」が結成されていることに気付く
しかし、この会に関する研究がまだほとんど行われていないことがわかる

③具体的な調査課題の設定
「おやじの会」とは何か?
「おやじの会」のメンバーはどのような動機で参加しているのか?
「おやじの会」がどのような効果をあげているのか?
「おやじの会」が全国で組織されつつあるのはなぜか?

ここまで調査課題の設定の手順である

■調査の設計
④調査技法の決定
現地地点では、量的調査にかけるべき要因も仮説も不明
→質的調査を選択

⑤調査対象者の決定
・全市町の教育委員会に情報提供を依頼
・インターネットによる情報収集
※調査にふさわしい対象者・対象団体を探す
→9つの「おやじの会」に関する情報を入手

⑥調査への協力依頼
・代表者へ、電話やメールなど
・調査の主旨と結果の公表方法を説明する
・調査の日時と場所を約束する

■データの収集
⑦インタビューの実施
・代表者を対象に設立の背景や活動の内容など尋ねる
・メンバーを対象に、生まれ育った家族と配偶者や子供からなる家族、学校や職場の経験、
父親の会に加入した動機や意味づけ、地域活動に対する考えなど聴き取る

⑧参与観察
・おやじの会が行う活動(フェスティバル参加、見守り活動、夜間パトロールなど)を見学し、活動状況を把握する
・おやじの会が行う定例会・飲み会や親子イベントに参加し、メンバーや子供達にとって、おやじの会とは何かについて考える

⑨簡単な質問紙の配布
・参加メンバーの家族構成
・職業
・出身地
・会への参加理由
・活動の意義
など把握する

■知見の整理
⑩「おやじの会」とは
同じ学校や幼稚園に子供を通わせる父親たちが連携し、子育ての楽しさや悩みを共有しながら、「父親」としての地位と役割を考えていこうとする取組

⑪設立の背景
・ほとんどの父親はPTAと密接に関わる機会が少ない
・犯罪の多発や環境の変化などが顕在化するようになり、コミュニティに対する関心が高まった
→PTA役員を担う父親や校長らが率先して、おやじの会を立ち上げた

⑫活動
・キーワードは「自然とのふれあい」「モノ作り」「力仕事」
→学校や子供会ではなどでは取組にくい活動で、子供達に様々な経験を与える機会となる
・活気があり、メンバーが増えているは、「自分たちが楽しいこと」に取り組むおやじの会

⑬メンバーの参加意義
・大都市中心部のA会は、「子供の教育に関心がある」「妻や子供に言われて」など
・近郊都市部のB会は、「地域の活力をあげるため」
→活動への参加を通して、地域社会に関心を深め、他の父親や住民との関係形成を強く志向する
→参加動機は異なっていても、住民が互いに手を結ぶことの大切さを理解するようになる点は共通

■考察-「おやじの会」の意義とは何か
⑭「父親」となる勉強の場
おやじの会は、子育て中の父親どうしが問題を共有しつつ、共に解決策を探る機会を提供する

⑮地域社会における活躍の場
おやじの会は、自らが地域社会で果たしうる役割を明確にし、多くの人々と繋がる契機をを生む

⑯異なる価値観や生き方に出会う場
おやじの会は、同じ地域社会で生活する多様な年代や職業の人々と出会う場を提供し、参加者の視野を広げる機会になりうる
→ワーク・ライフ・バランスの見直しへ

■(まとめ) フィールドワークが「役に立つ」とは
□社会現象の把握
・ある社会現象について、「何がどうなっているか」
・ある社会現象について、「なぜそうなるのか」
・ある社会現象について、「どうすればよいか」
→現実に利用可能な社会的資源や福祉制度、支援策を検討し、「望ましい状態」の実現に役立てる

□異文化に対する理解
・異質な他者とであった時、その行為の意味は必ずしも自明でなくなる
・相手の主観的世界を理解し、行為の意味を解釈する過程で、「当たり前」と考えてきたことの見直しを余儀なくされる

何も知らずにアンケートを作る事はできない。
その対象をある程度理解できるまで調べ、自分が想像できるレベルに到達し仮説を立てる。
その仮説のもとインタビューを行う。
インタビューから得た情報を元にアンケートを作成する。
これが検証につながり、仮説を修正し、また検証を行う。

まず自分で調べ、対象に聞き込み、多数へアンケートなどで検証することを覚えた。
実際には自分足で調べることから始まり、近くに行くことで感じることも多い。

これはフィールドワークの流れだが、おやじの会の話を通じて「自ら楽しまなければ誰も楽しくない」ことも合せて学んだ。
折角なので「楽しむ」ことを考えてみたい。

べイダー秀吉

 

 

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